二次元の人々のこと

二次元の人々は、いつまでも歳をとることはない。

私がおばさんになったのに、昔見たアニメを見返しても、漫画を読み返しても、彼らはあの日のままでそこにいる。

実写映画の場合、そこにはあの日のままの人物たちがいるが、実際には演じていた役者さんがいて、我々は、彼らが結婚しただのどうだのという情報を知り、勿論年齢を重ねた彼らの姿を見ることになる。

二次元の人たちにはそれがない。

当たり前のことなのだが、複雑な感情におそわれた。

今、「宇宙戦艦ヤマト」を見返しながら、作品に

「お元気でしたか。長いことごぶさたしてましたが、どのようにお過ごしでしたか。あの頃、あなたの中にあった望みや夢はどうなりましたか。今はそれなりに充実されてますか。」などと話しかけられているような気がする。

私は彼らにはにかみながら「どうですかねぇ、全然ですよ、…、でも、まあ、それなりにはやってますが…」などと心で答えている。

 

子供の頃(いや若い頃というべきか)、私は二次元の人に結構本気で恋をしていた。

それは現実の人間に対する恋よりもたちが悪い。

当然ながら絶対に実らぬ恋であろうし、ある意味マスターベーションじみているといってもよいから。

傷つかない代わり、どこまで言っても堂々巡りの迷宮にいるようだ。

迷宮はある意味安住の地でそれなりに楽しい。

ある日、ふと出口が見つかって、外に出た。

いったん外にでると、外は思った以上に刺激的ですっかり迷宮を忘れて久しく暮らしていた。

そうこうして何年かがたって、ある時、雑多なものをいろいろと片付けていると、部屋の隅に小さな入り口があるのを見つけた。

迷宮の入り口だった。

こんないい歳になって、入り口から入れるかなぁ?と思いながら、私は迷宮に足を踏み入れた。

そこは昔、私がいた頃の迷宮のままだった。

懐かしくて有頂天になった。

私は許されるなら、もうしばらくはここに居てもいいかなぁと思っている。 

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