「サムライフラメンコ」の後藤さんのことを考えた

「サムライフラメンコ」が最終回を迎え感想も書いた私だが、後藤さんのことを考えている。

後藤さんのあの依存症ともいうべき携帯メールによる一人芝居のことだ。

物語の終盤に後藤さんが久しぶりの休暇で故郷の町に戻ったことをきっかけに、羽佐間君と真野まりは彼の異常な一面を知ることになった。

勿論、視聴者もだ。

私は後藤さんのこの依存について今までに怖いとか、病んでいるとか書いたが、よく考えるとそんな負の側面ばかりじゃないような気もしてきた。

 

後藤さんは高校時代、つき合っていた「彼女」といつものようにバスで帰路についたのだろう。

そして彼が先にバス停で降車して彼女を見送ったのだろう。

彼女は笑顔で後藤さんと別れた。

明日になれば又、後藤さんと「彼女」の日々はいつものように続くはずだった。

それが後藤さんが「彼女」を見た最後となった。

「彼女」とバスの運転手の二名がまるで神隠しのように行方不明となり、手がかりもないまま「彼女」は再び姿を現すことがなかった。

後藤さんの携帯には「彼女」の「又、明日ね…」のメールが残されたままになった。

後藤さんは「彼女」に携帯メールを送った、送り続けた、彼にはそれしか出来なかったからだ。

 

後藤さんはどういう高校生だったのだろう。

「彼女」以外に友達はいないのだろうか。

私がいぶかしんだのは「彼女」と後藤さんは恋人同士だったのだろうか?

もしかしたら、まださほど深い仲ではなく、つき合い始めたばかりだとか、軽くつき合っている程度だったのではないか?というふうにも思われるのだが…。

後藤さんって友達がたくさんいるタイプじゃないのでは?

そして、彼女の行方不明で一人芝居のように「彼女」となって自分とのやりとりをすることで後藤さんはとても充足感を得たのではないだろうか。

 

勿論、最初は受け入れがたい辛すぎる現実を回避する為に、心の防御として始まったと思うが…。

もしかしたら、実際の「彼女」と過ごす日々よりも、それは心地良いものだったかもしれない。

誰よりも自分のことを分かってくれて、自分を勇気づけてくれて、自分の目指すべき方向を適切に示して応援してくれる。

だって「彼女」の形を借りた自分自身だから一番自分を分かっているだろう。

 

そしてそれは思うよりも後藤さんをしっかりと支え、皮肉なことに、外界とのコミュニケーションにも役立ったかもしれない。

後藤さんは「彼女」の励ましで、いつも自分に自信を持てたし、自分の足場がしっかりした分、他人に対しても包容力をもって接することができたのではないか。

後藤さんが物語の中で一番まともで頼りになる人物に映っていたことを考えるとちょっと複雑な気分だ。

 

私は後藤さんが一人芝居に飲み込まれているのでは?人格が分裂しているとか…?などと心配になったこともあったが、澤田灰司に「彼女」の最後のメール消された時「あいつはほんとにいなくなっちまった。俺はほんとに一人になっちまった。」と叫んだのだ。

後藤さんはあのメールを拠り所に「彼女」を演じていることをちゃんと自覚していたのだ。

そして羽佐間君による救出劇の結果、「彼女」さんからの「私、しばらく旅に出るよ、元気でね」のメールを受信する。

(あれ、あの場面で自分でメール打ってたのか?その姿を想像すると…、どうよ?笑)

 

この分なら後藤さんは今後きっともうちょっと上手く一人芝居と折り合いをつけてゆけそうであろう。

後藤さんがメールに依存していたことより、「彼女」さんを無くすと一人になってしまうと思っていたことが問題だったのだろう。

後藤さんには今までも本当はずっと誰かがいたはずだが、後藤さんがそれを見ようとしなかったことが…。

 

思えば羽佐間君も友達いなさそうである。

あの作品に出てくる人たちは一風変わった人が多くて、皆そんな感じの人だ。

しかし、よく考えれば世の多くの人だって皆円満に友達がたくさんいて、という人たちばかりではないだろう。

そうでない、友達いない人だって結構な数いると思う(勿論私も含めてだ)。

人には言わないがこっそりと生きにくさを感じている人はもっといるかもしれない。

 

皆それぞれの形で外から見える見えないの差はあれ閉じているのかもしれない。

後藤さんと羽佐間君は出会いによって二人してちょっと開いたかもしれない。

本当はそんなふうに他人との関わりで開いていけるのがいいと思うけど、すぐに全面的に開けるってことはなかなかね…と思うけど(苦笑)。

 

私は後藤さんを考えれば考えるほど彼の異常さへの違和感が薄れてきた気がする。

もしかしたらほんのちょっとずれてるだけかもしれない。

普通と異常は地続きだ、でも、キングトーチャーぐらいになるとずれてるだけじゃすまないだろう。

あれくらいになると「これより先、怪物領域」というやつだろう(苦笑)。

 

そしてやはり思うのは私だってそんなに変わらないのかもということ…、携帯メールじゃないけど別の方法で自分で自分を支えてるって意味で。(総統とブログで会話とか、いろいろ…と、…ぽくないでしょうか?・汗)

怖くないって書いたけど、やっぱりなんだか怖いかも!!(いろんな意味ですごく怖い!・笑)        

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コメント: 2
  • #1

    なの (日曜日, 12 4月 2015 05:34)

    最近になってサムライフラメンコにはまって昨日最終回まで一気見しました。サムライフラメンコ大好きでいろいろ調べたらこの記事にたどりつきました。
    後藤さんが彼女さんとのメールのやりとりを自作自演していることを知った時衝動的で涙が止まりませんでした。でも好きな人が死んであまりにも辛かったら何かにすがりたくなると思います。私も好きな人がいるんですがその人が亡くなった世界を考えるだけで嗚咽がこみあげてきます。だから後藤さんがしていることは心の防御であるから異常だと思いませんし羽佐間さんに出会って少しでも救われたのが幸いです。話が変わりますが、記事に書いてあるとおり私も生きにくいと感じます。だからこそいろいろな人に支えられて生きていることを実感します。人は一人で生きていけないなと思いました。サムライフラメンコ本当にいいアニメでした。

  • #2

    HEBI (水曜日, 20 5月 2015 15:16)

    放送当時も今も「サムライフラメンコ」ってなかなか深いなぁ…と思ってます。
    押し付けがましくなくそういうのを感じさせてくれるところも大好きでした。
    時にこういった作品に出会えるので、アニメを観るのはやめられないなぁと思う私です。

    ちょっと病気していて、このホームページも放置状態だったので、お返事書くのもこんなに遅れてしまって…申し訳ないです!(汗)
    なのさん、コメント本当にありがとうございました。