「蟲師」は、原則一話完結の連作形式である。
それを繋げる役割を担うのが主人公ギンコであり、彼が物語のナビゲーター役でもある。
連作の中には、ギンコが傍観者のような薄い関わり方のものもあるし、ギンコ自身が物語の主体となるような話もある。
ギンコの主たる話は、所々にさりげなく織り込むように配置されているのだ。
漫画では巻が進むに連れ、個々のエピソードを楽しみながら、いつの間にかちゃんとギンコの生い立ちから今に至るまでの人生が読者にも分るようになっている。
連作の場合はこういう形もよくあるのかもしれないが、説明臭くなくて上手い作りだなぁと思う。
独特の雰囲気の絵柄の作風も相まって、なんともいえない情緒と趣深さが作品からは感じられる。
物語はとてもシリアスな内容もあれば、少し軽めの印象のほのぼのしたものもある。
ハッピーエンドもあるが、悲劇的な結果で終わるものもある。
蟲という人の思い通りにならないものの影響を受け、それまでの生活を変えられてしまう人々がいる。
彼らが翻弄される姿に人間の無力さを思い知らされたり、愚かさを見せつけられたりする。
だがそれとて、何か因縁めいた原因があるわけでもない、人間側も悪くはない、まして蟲側だって悪くもない。
ただ、単に人と蟲、二者が偶然その生を交錯させた結果なだけなのだ。
だからこれは蟲退治の話ではない、偶然に特異な状況に陥った普通の人々の心の葛藤、軌跡、着地点を見つめるような物語なのだ。
どの作品の底辺にも流れるものは諦観のように思う。
ギンコは自身の幼少期の希有な体験により普通の人として生きることはままならない。
肉親を亡くし、育ててくれた大切な人も蟲の関わりで亡くし、その上蟲を自分の中に入れたまま一所に留まることができず、常に旅にあらねばならぬ身の上…。
蟲師を生業に一生を旅に生きるのを運命付けられている。
しかし、普段の彼からはそういった悲壮感は漂ってはいない。
むしろ何にも囚われず飄々としていて、彼と接した者はとっつき易い雰囲気、安堵感、癒しを感じるかもしれない。
私たちは、彼を通してさまざまな人々の数奇な人生を垣間見るのだが、ギンコが常にこうした安定した人格としてその場に在るから、平静な気持ちで物語を見ることができる。
でも、時々たまにではあるが、どこか物悲しく寂しげな面差しを見せるギンコを目にする時、私たちは飄々とした普段の姿の陰に、忘れかけていた彼自身の誰よりも数奇な身の上を思い出すのだ。
はっとさせられ、胸を突くような哀愁を感じさせられる。
そう、ギンコはやはり、単なるナビゲーター役ではない。
個々の物語を束ねる大きな物語「蟲師」の魅力的な主人公はやはりギンコでなくてはならないのだ。
ギンコはいつもニュートラルな立場であって、人間と蟲と双方の立場を尊重しているように見える。
ギンコが蟲によってそれまでの生活を変えられた人々と接する時にも、彼の態度はあくまでも冷静である。
しかし、冷静でありながらも彼の奥底には人間に対する深い慈しみがあり、驚くほど熱い心が彼の中にはあるのだ。
だからどんな時も決して最後までギンコは彼らを見捨てることはない。
いつも諦めることなく辛抱強く手をさしのべ続ける。
だが、現実社会もそうであるように、いつもいつも人の都合の良いように全てが運ぶことはない。
結局手を差し伸べても救うこともできず、ただただ最後を見届けることしかできないということも少なからずある。
しかし、そうであっても、この作品では、どんな悲しい結末を見ることになっても後味は決して悪くはないのだ。
むしろ、その中にでも、なにか一筋の救い、光明を私たちは見たように感じる。
きっとこれはギンコの姿勢に体現されている、作者の人に対する見捨てることのない温かい眼差しに所以するものだろうと私は思っている。
そしてだからいつも「蟲師」の物語は、原作を読む者にも、アニメを観る者にも深い感動を残すのだろうと。
ギンコのビジュアル面も大変気に入っている私である。(アニメ版についてここでは書く)
勿論いつものことで恐縮であるが、髪が白っぽいというのはツボです!(笑)。
そして瞳が緑色(たまにブルーがかってたりするのもポイントアップだ!)というのもいい。
ロングショットで変な顔してる時もカワイイ、そして寂しげに見えるシリアス顔がこれまた素敵だ。
服装が質素というか、飾り気がないのもいいなぁ…、もう、なんでもかんでもいいと思う。
が、又、人々の反感を買うことを承知で言う。
ちょっと目が虚ろなところとかに、ほんのちょっとだが、ほんとうにちょっとだけなのだが…、見ていて、デスラー総統(旧作)を思い出している。
「テルマエロマエ」のルシウスにも面影見て、漫画を読みながら赤面した私だが、勝手気ままに今度はギンコに…。
ぜったい今度の方が避難轟々なのは分かっている。
でもとにかくどこかちょっとした部分でもよいから、誰かに面影を…、かすってるだけでもいいから(そんな微かにかすってるだけでも?笑)、とにかく捜したいのよ、私!!(ほんと、私よ!どうかしてるぞ!・笑)
こんなことを考えてるだけでも、ギンコさんも怒ってると思うけど、デスラー総統だって、「そんなに誰彼となく他人に面影探さずに、私一筋でいけ!!」と怒ってらっしゃるかもしれないなぁ…、すみません!!
ほんと、変な妄想するなら、原点の「宇宙戦艦ヤマト」を観直せ!!という怒号が聞こえそうである(汗)。
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