ドラマ「ペテロの葬列」が面白い

このところ実写ドラマを夢中になって観るということは久しくなかったのだが、今期はこのTBS系列のドラマ「ペテロの葬列」を注目して観ていた私だ。

 

以前のブログで、ディアゴスティーニ製のデスラー総統のフィギュアを手に入れた云々という近況を書いた。

その中で、ディアゴの総統フィギュアの面差しがどこか小泉孝太郎さんに似ている気がする…と書いた私だった。

そう書いたもののその後、ほんとに似てるか?…気のせいでは?いやはや、あくまで私の主観だからなぁ…、なんて気弱なことも考えながらも、あれ以来小泉さんをTVで見る度に必要以上に意識するようになった。

そして確実に前よりもずっと小泉さん贔屓になったと思う(笑)。

この小泉さん贔屓ということも、私がこのドラマに注目した一因であるといえよう。

 

しかし、決してそれだけではない。

このドラマの演出が、なんだかやけに面白いと思うのだ。

 

実は私は第一回放送分を見逃している。

二回目も、三回目も家事の片手間に観た程度だったと思う。

しかし、回を重ねるごとに片手間ではいられなくなった。

腰を落ち着けて観るようになっていった。

今では、始まる時間を気にして、始まるとTVの前で画面に釘付け状態で、しっかりと見入っている。

 

演出が面白いと書いたが、毎回劇中、同じような時間帯に同じような演出の場面が出てくるのが特徴だと思う。

例えば、ラスト近くには必ず主題歌のサビ部分が効果的にシーンに重なるように流される。

続いてメインテーマの音楽が被さるように必ずかかってきて次回へ期待を持たせるような予告じみたナレーションが主人公のモノローグの形で入ってくる。

他にも、何故か水滴が水面に落ちる「ピチョン」というような水音が劇中、効果的に使われたり(この音を聞くと、ダレ気味で観ていてもハッと気が引き締まるというか…・苦笑)。

又、要所要所で絵画が象徴的に映され、それに主人公の意味深なナレーションが被せられたり…(絵画も何点か名画が出てくるのが見ていて楽しかったりもする)。

 

毎回それじゃ同じパターンの演出で工夫がないと思われるかもしれないが、実はこれがとても効いているのである。

毎回同じようなことが、繰り返されているのが決して嫌ではない、むしろ心地よく思える。

不思議なほど観ていて安心感があるのだ。

 

そして、こんなことを書いていいのか?と思うが…、主人公たちが追っている謎というか、事件の真相というものが、判明してみれば、どれもこれも実は大したものではなかったような気がする(苦笑)。

大したことではない真相を追う主人公たちが、たいそうドラマチックに緊迫感溢れて演出されるのだ。

そして観ている私もそれに巻き込まれて、後で思うと「なーんだ、そんなことか」と思うような真相が意味深に語り明かされるのを息を詰めるように見入っているのだ。

よーく考えればこれって「スゴイ」ことだと思いませんか?(笑)。

たいそうな真相をドラマチックに描くのは誰でも出来るかもしれないが、ちょっとした真相なのに、こんなにドキドキさせて息を詰めるような緊迫感をもたせて描き出す手法は素晴らしい。

これこそ見せ方の妙というのでありましょう。

 

音楽も使う場面では大きな音量でドーンと派手に入れてくる。

はたまた真相が明かされるような場面は誰かの告白といった形を取ることが多かったりするのだが、そこは音楽は一切無しであくまでも人対人の対話の形でということが多い。

音楽の使い方一つをとっても、ちゃんとメリハリが効いているのだ。

 

おまけに劇中ここという場面では物語の流れを補うように主人公のモノローグがしっかりと入る。

モノローグの使い方も一歩間違えば逆効果だと思うが、この作品ではモノローグにより物語の流れが整理されて、視聴者にとっては分かりやすさが増している。

おまけに小泉さんの真摯な喋り方のせいか、このモノローグを聞くと緊迫感も増すような気がする。

 

他の人はどうかは分からないが少なくとも私は、こういったこの作品の演出の仕方に「ハマった」といえよう。

 

この物語の粗筋は私が書くよりネットのウィキペディア等で見てもらった方がいいと思う。(きっと私が書くとダラダラ無駄に長くなるような気がするし…苦笑)

 

一番大きな事件は冒頭に起こったバスジャック事件だろう。

犯人は事件の最中、自ら命を断っているのだが、事件収束後に、この犯行の真意がバスに乗り合わせていた被害者たちによって徐々に調べ明かされていく。

過去に彼が加害者の一人として関わった大きな詐欺事件の今だ裁き切れない闇と、彼自身の悲しい生い立ちと後悔に満ちた人生が明かされてゆくのだ。

そして死んだ犯人から慰謝料という名目で内々に送られてきた何百万円もの金銭を受け取った被害者たちのそれぞれの動揺、葛藤も見ていて興味深い。

この主となる事件と平行して別の殺人事件が起こったり、はたまた主人公のプライベート面におけるの夫婦間の心のすれ違い、亀裂なども描かれてゆくのだ。

 

物語中には悪に見える善意、善に見える悪意が入り混じっている。

登場人物たちが、それぞれに突きつけられる現実に揺らぎながらも、精一杯対処している様を見ていると身につまされる部分も大いにあって深く感じ入る。

 

私は主人公を演じる小泉孝太郎さんがなかなかのはまり役だと思っている。

あの主人公は、困難に出くわすことがあったとしても、時折ちょっぴり心が揺らぐことはあるかもしれないが(人間ですから多少はね・笑)、最後はちゃんと正しい道に戻ってこられる人である。

彼の人格者的なキャラクターが非常に重要なのだ。

あの主人公を通して物語が語られることで、視聴者は観ていて安心するのだ。

彼以外の登場人物たちが、本当はどんな人なのか途中計りかねる場面が時々出てくる。

さっきまで安心して感情移入できた人物が、突如得体のしれない人物のように思えることがあるのだ。

そんな時も主人公がほとんどブレない人物なので安心して観ていられる。

 

もしかしたら、俳優さんは悪人を演じるよりも善人を演じる方が大変なのでは?と私は思っている。

善人役を演じている際には、役者さんの地の部分が薄っすら透けて見える気がすることがある。

私の気のせいかもしれないが…、善人役を演じているはずなのにそのキャラからクリアな善人じゃないような印象を受けてしまうといった俳優さんもたまにいるような気がする…。

その点、小泉さんは極々常識的で心底人に対して善意をもって接するこの主人公をきっちり「ちゃんと」演じられていたと思う。

 

さて、来週はいよいよ最終回らしい。

今まで大変面白く観させてもらったので、この話に決着が付いて終わっても、別の話で又、再度お目見えしてもらいたいと思うぐらいであるが…。

私は原作は未読なのだが、続編って作られる可能性はあるのだろうか?(原作はもうない?)

出来ることならば是非望みます!

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