「シドニアの騎士」2期の岐神海苔夫(落合)のこと(第9話まで)

「シドニアの騎士」2期が放映中である。

1期の放送時にこのアニメがとても気に入っていると書いた。

重複になるが、人物の絵柄も好みだし、戦闘シーンもカッコいいし、敵側ガウナの異形具合も気味悪い所が又良いし、シドニアの街並み等背景美術も独特の趣があって素敵だし、こう書き並べると良い所だらけだ(笑)。

2期の1話目で封印されていた場所に立ち入り落合(補助脳)に身体を乗っ取られた岐神海苔夫。

…、封印、乗っ取り…って、これじゃ落合って怨霊みたいだ(苦笑)。

姿は岐神海苔夫だが、中身はあの超ふてぶてしい落合になってしまったので、1期の時のような焦燥感に苛まれながら爪を噛むなんて姿はもう微塵もない。

不敵な笑みを浮かべ、どの場面でも自信満々に堂々と振る舞う姿を見せる。

時に作画で彼だけ顔の影の付け方がとても濃い為、ホラー作品の登場人物のような禍々しい雰囲気さえ漂うのだった。(梅図かずおさんの恐い漫画の人物みたいだ…・苦笑)


古来より、邪悪な何者かに肉体を乗っ取られるという物語展開は間々ある。

全てがそうだとは言わないが、そういう場合、乗っ取られる側にも隙があることが多分にあるように思う。

海苔夫の場合も八方塞り的な悶々とした心理状態の中、敢えて自ら禁忌を破って封印の場所に立ち入った。

行動を起こすことで自分が状況的にも心理的にも何か変われるかもしれないという期待を持って扉を開いたのでははないか。

まさかその結果、落合に身体ごと人格も乗っ取られることになろうとは想定していなかっただろうが…。


2期の岐神海苔夫の中身はもう落合一色なので本当は海苔夫じゃなくて落合なのだが、皮肉にもこの海苔夫がこれまでで一番堂々としていてカッコよく見える。


海苔夫は名家の御曹司で、衛人の搭乗員としても岐神家の跡取りとしても皆から将来を嘱望されていたと思われる。

そんな時突然現れた谷風長道に、圧倒的な実力の差を見せ付けられることになる。

結果、能力的にも人間的にも自分が未熟なことを思い知らされ、生まれて初めて劣等感を持つことになる。

そして彼が今まで心の支えとしていた自負心も揺らぐことになっただろう。

それまで彼が見ないようにしていた自分の中の孤独感や寂しさにも対峙せざるを得なくなったと思われる。

しかしそれらは本当は長道の存在云々のせいではなく、元々彼が抱えていた問題だったのかもしれない。


アニメの中で描かれている場面がないので断定は出来ないが、彼の家庭環境は金銭的には恵まれてはいるが、明るく楽しく愛に満ち溢れたという風ではなさそうだ。(他の人の家庭環境も謎ですが…)

そんな中にあって海苔夫は、何事においても人より優れた成果を出し、輝かしい姿でトップに立ち、人々の賞賛を受けることが自分のあるべき姿だと信じていた。

周りもそれを期待していただろうし、彼もそれを体現することが自分には不可欠だと思っていただろう。

自覚はなかったかもしれないがその理想は、彼自身を縛り足かせのようになっていたのではないか。

そんな彼にとって理想の姿を体現できそうにない自分を認めることはなによりも恐ろしいことだったのかもしれない。


おそらく海苔夫は彼自身が思っているのとは違い、ある意味極々「普通の人」なのではと私は思う。

自分より優れた存在長道に嫉妬したり、仲間の星白を自分のせいで死なせてしまったことにショックを受け後ろめたさを感じながらも素直に謝罪することも出来ず、それでいて罪悪感に苛まれPTSDになったりもする。

又、斜陽になった岐神開発を継ぐことになっても、これといった打開策も出せない自分に悶々としながら、無力感の中で日々を過ごす。

私のようなごく平凡な者にも気持ちが十分理解できる普通のキャラクターの人物なのだ。


片や、なりたい自分があればどんな障害があろうと成る、したいことがあればどんな方法をとろうともなし遂げるというような強烈な自我の人が落合。

迷う姿もないし、目的の為なら手段も選ばないし、この人には後悔するなんてことも一切ないのでは…と思われるような特別な人物。

全く持って「普通の人」ではない落合。

私はこの作品には他にもあと二人「普通の人」ではない人がいると思っている。

それは、小林艦長と谷風長道。

三者三様で個々の方向性は全然違うけど、この人たちはどこか似たようなところがある。(ただ落合は別格に振り切れてしまってはいるけど…笑)

彼らの中には絶対にぶれない筋が一本通っていて、例えば絶体絶命のいざという時にも(そういう時こそ余計に)常人には到底出来ないような決断を躊躇なく下せたりするのだ。

凡人の私は彼らの行動を見るにつけ、その大胆さに驚き、尊敬し憧れながらも「でも、ついていけないかも…」なんて感想を持ったりするのだ。(人も何百年も生きているとああなるのだろうか…?苦笑)。


そんな普通じゃない落合に乗っ取られて、海苔夫は今かつてこうあるべきと思っていたような自分の姿になっている。

人間的な弱さ故に心の平静さを失い自分自身を持て余していた海苔夫は落合に乗っ取られたことで解放されたようにも見えるのだ。

堂々としていて何にも怯まずカッコいい姿だけど、これって結局は落合なんだよね…、海苔夫が1期からずーっと気になっている私としては観ていて大変複雑な気分です(笑)。


落合になってしまった海苔夫の行く末を案じながら、本体の落合の歯止めなき暴走ぶりも恐る恐る期待の今後なのであった。


ちなみに2期を観ながら落合がらみでずっと気になっているのは、やはり小林艦長との関係だろうか…。

私は漫画は読んでないので、アニメだけ観ての感想だけど、1期の「降ろしの儀」の時にふと感じた疑惑が又私の中に戻って来た。

やはりこの二人の間にかつて恋愛感情などあったのでは?という気がしてならないのだが…?。

うーん、いろいろ邪推しすぎですね…(苦笑)

                   戻る