漫画「磯部磯兵衛物語」が面白い

病気をして入院したことを、このブログにも書いたが、その入院時、暇な時間がたくさんあるはず、読書でもして暇をつぶそうと思っていた私だったが、実際そんなことは全然出来なかった。

治療の抗ガン剤と放射線の副作用のせいで、体力的にきつかったこともある。

それにもまして、このまま近々死んでしまうかもという不安にへこんでいたのだと思う。

 

前々から薄々思っていたのだが、身の上に重大な事態が降り懸かっていると、人は読書どころではなくなるのではないか。

絵空事を楽しむ余裕がないというか、自分のことを考えるだけで手いっぱいというか…。

そう考えると読書に没頭できる時は、それなりに精神が安定している状態なのかもしれない。

悩みがあって読書に指針を求める時もあると思うが、そんな時のその悩みはまだまだ余裕のある悩み、読める内まあまあ大丈夫なのではと思う。

他の人はそうじゃないかもしれないが、少なくとも私はそうみたいだ。

 

と、いうことで、シリアスな小説はもとより、日頃は好んで読んでいたミステリーなどもダメだった。

読んでも、うわの空で、全然頭に入ってこないというか…。

かろうじて読めたジャンルは竹書房の文庫シリーズの怪談実話ものと、TV番組表が載っている「ザ・テレビジョン」という雑誌と、そして漫画では「磯部磯兵衛物語」だった。

 

少年ジャンプで連載している「磯部磯兵衛物語」は話題になっていたので入院する前から既に何巻か読んでいた。

この漫画、一番の特徴は主人公たちの絵柄が浮世絵みたいだということ。

浮世絵みたいな顔の主人公…、ありそうで今までなかったよね。

う…ん、よく思いついたなぁ、仲間りょう先生。

 

私の場合は、まずこの絵で掴みはOKであった。

うま下手?というのだろうか?こういう感じの絵柄の先生ってたまにいる。

私が同様の感じを受けるのは、「ギャグマンガ日和」の増田こうすけ先生とか、吉田戦車先生とか(うーん、吉田先生はちょっと違うか?・笑)。

もし、絵柄がこんなではなくて、端正でスタイリッシュな感じだったら(ギャクにそれはないか?・笑)きっとイメージは全然違うだろうし、おそらく私は今みたいに心惹かれなかったかもしれない。

この部分、内心複雑なのだが、先生には絶対にスタイリッシュになっててもらいたくないなぁ。

どうか、今のままでいてほしいです。

 

話の内容はすごーくゆるい。

そして実は私はこのすごーくゆるいところがとても気に入っている。

 

主人公の磯兵衛は向上心が無いわけではない。

結構高い目標を掲げていたりする。

それに向かってちょっと努力をするが、ほんといつもちょっとだけした位の段階で挫折して、結局は現状維持のままである。

なんか親しみわくなぁ(笑)。

 

そういう磯兵衛の日常話が多いのだが、5巻で幻の刀マサムネを巡る話が描かれたことがあって、これがいつもの読み切りストーリーとは違い、何話にも渡って続く続く。

まあ、面白くなかったわけではないが、磯兵衛がこういったストーリーものにシフトしていってしまったらどうしよう…とこの時は心配したものだった。

少年ジャンプって連載しているうちに、作品の毛色が変わってしまうことがよくある雑誌のように思うので。(物凄く古くて申し訳ないですが、「キン肉マン」や「幽々白書」とかみたいな…)

私の勝手な願いは、今のようなたわいない、ゆるーいままの磯兵衛と周辺の人たちの営みが読み続けたいのだ!

その後、私の心配は杞憂に終わり、又、いつものような読み切りのスタイルになったので、まあ一安心である。(と言っても今後どうなるかは、私には分らないので、心配が無くなったわけではないですが)

 

何も読めなかった闘病中に読むことが出来た数少ない本「磯部磯兵衛物語」。

私は好きな理由をゆるーいストーリーとお気に入りの絵柄と書いたが、それ以外に、もう一つ大きな要素を挙げるとしたら、それはこの漫画の品の良さだと思う。

ギャグ漫画に対して変な評価かもしれないが、ちゃんとした倫理観が感じられるところがとても気に入っている。 

ギャク漫画にもいろんな持ち味の作品があると思うが、今の私はこういうのが好みです。

 

今、7巻まで出ているのだが、8巻は10月3日発売予定らしい。

おそらく私は8巻も買うと思う。

 

ちなみに、私の特に気に入っているキャラは、磯兵衛の母上と、先生かな。

どちらも破格の超人だと思う(笑)。