17.ドメルのこと
ドメルは今回見直すと、宇宙の狼とうたわれた名将であるが、なかなかクセの強い人物であった。
男っぽい体育会系、ふてぶてしく、度胸が据わっている。
一人だけ全身タイツっぽい戦闘服で戦地に出ている、身体の線がもろ出るわけだから身体にもよっぽど自信があるとみえる(笑)。
ドメルも自己顕示欲の強いナルシストさんと見た。
デスラー総統もナルちゃんであるが、どっちが上かなぁ?
対人関係において物言いも辛らつで遠慮なくストレート、態度も結構高圧的。
部下の地位に下ろされたゲールの反感を買ってしっぺ返しされるのも、あれじゃ仕方ないかもしれない。
むしろゲールに同情しそうになった。
しかし、その分、軍事面の作戦はさすがに隙無く、狡猾な罠も仕掛けてくるし、洞察力も鋭い。
きっとガミラス側ではドメルが一番ヤマトの手強さを正確に認識出来ていただろう。
バラン星では、邪魔がはいらなければ、もう完全にヤマトをつぶせていた。
それに比べるとデスラー総統は最期まで侮る気持ちと驕りを捨てきれていなかった。
ドメルの方がやはり名将かもしれないなぁ。
そして地球の沖田も名将だ。
名将は名将を知る。
ドメルといい、シュルツといい、ガミラスの軍人は死をもっても戦いぬこうとする。
デスラー総統バンザイと叫びながら。
ガミラス帝国に忠誠心を持っている。総統に対しても持っている。
総統、そんな慕われるようなところあるのか?
ちょっと首傾げたくなるが、いや、一見分かりにくいけど、きっと魅力的な人物なのよ、カリスマ指導者なのよ。
前線に立つと自ら果敢に攻める、すごく頼りになるとか。
ヤマト相手だといつも負けちゃうけど(主役を立てなきゃならない脇役の辛さ)、普段の戦いだと武勇、知略に長けて無茶苦茶強いとか。
常は冷徹に接してるくせに、ごくたまにやけにフレンドリーなところを見せて人の心を掴むとか…。
人は人を見るものである、周りがあんなふうに付いて行ってるところをみると、やはり、ひとかどの人物なのでしょう。
人は最期の時にはその人の本性がでるはずである。彼らガミラス軍人が、果敢に戦い、激烈な死を選らんだのは、ガミラス側が、皆本気で地球移住に自星の命運をかけていた証拠であろう。
そう思うとなんか、ちょっと切ないなぁ。
18.デスラー総統は好戦的
総統、ガミラス本土決戦で直接指揮を執るあたりから、俄然テンション上がっていった。
作戦説明演説も熱かったし、実際ヤマトを星におびき寄せてからも、怖いくらい生き生きと攻撃命令出していた。
この人、ほんとに戦いが好きなんだと見ていて思った。
むしろガミラスが強大な軍事力を持っているので、その力にのみ込まれてしまっているのかもしれない。
きっと、ずっと負けたこともなかったのだろう。
戦艦一隻に負けるはずはないと思っているから詰めが甘くなったのであろう。
沖田艦長の肉を切らして骨を切る的な決死の攻撃で無敵であったろうガミラスは敗れ去る。
総統も、岩の下敷きになって亡くなったと思ったが、最終回、帰路についたヤマトをしつこく追撃してくるのである。
デスラー砲は撃つは、ワープで避けられると白兵戦をしかけてくるは、もう何も聞く耳持たずの、ひたすら攻撃しまくりである。
ここで出てくるのが謎のムチ使用のシーンである。
白兵戦の前の場面で、ワープで逃げたヤマトを追いかけるためにこちらもワープをしろと兵士に命令する総統。
計算してからでないと危ないって部下が言ってるのに、とにかく早くしろって、熱くなっちゃって、猛獣使いみたいなムチで部下をビシッと打っているわけ。
ウーン、こんなキャラだったか?
そういえば大演説の時に壇上の上にムチの持ち手部分らしきものがチラリと見えていたような。
戦いに赴く時はムチ愛用者となられるのか?
たぎる心で、やや荒くれ者化するというところであろうか、なんか凶暴な感じである。
総統は、最後のこの追撃の際にも「ガミラスは死なんよ、このデスラーもな」とガミラスが自分の目の前で死の星となった今もガミラスの総統デスラーを名乗りこのセリフを吐く。
なんの反省もなく、プライドだけは高いまま自分の撃ったデスラー砲のはね返りで死んでいく。
美化されることもなく、むしろ滑稽、惨めとも見える死に方だった。
一作目の総統は悪役らしい悪役としても十分素晴らしかったなぁと思うのであった。
19.デスラー総統の性格について
性格は複雑そうな気がする。
漂う雰囲気もなにやらとにかく怪しい。一筋縄ではいかなそうである。
まず、冷酷、傲慢、尊大、驕慢、傲岸不遜、慇懃無礼、好戦的、ナルシスト、怒りっぽい、執念深い、しつこい、やや凶暴、皮肉屋、一見そうでないように見せてとても短気、意地っ張り、悪い方はいっぱい並んだ。
清潔好き(とても良い匂いしそう)、リーダーシップがある、清廉潔白(私欲は全然なさそう)、度量の広さもある、礼儀正しい、ロマンチスト、硬派、人を見る目はある、
一本気、勇敢、責任感強し、愛国心強し、決断力ある、自信家、ポジティブ、純情、女に優しい、紳士的、真面目、好色ではない(?)、カリスマ性抜群、きっと心根は真っ白である、どうだろう、力の限り頑張ってうんと並べてみた。
とにかく負の要素と、いいところが複雑に絡まりあって、一人の中にあり過ぎるような気がする。
なのでとらえにくい性格になっていて、それが怪しい雰囲気をかもし出している気がする。
総統は出てくるだけで、その場の空気を掌握するぐらのオーラがある。
きっと周りの部下もこの強烈な総統オーラに圧倒されて離れられなくなっているのだろう。
私の妄想では、きっと幼少期には母にしっかり愛されて育っているように思う。
ちゃんとこの頃に愛情を注がれているはず。
そのあと早い時期に何らかの事情で、親の愛情が受けられなくなったのではないか(死別か生別か?は分からないけど)。
少年、青年期はいろいろご苦労されて育っているのではないだろうか。
元の心は真っ白のままだが、そのままではいろいろ傷ついてしまうので、負の要素がいっぱいくっ付いて自己を守っているのではないか。
などと、想像している私である。
総統、いつもシリアスしてるのに、シリアスしすぎて、どことなく変で、突っ込み所が満載状態になっている。
大真面目なのに、視聴者から見るとなんだか妙に笑える雰囲気が漂ってしまっているようなところが私は好きだ。
20.イスカンダルとガミラスの生き方
イスカンダルは星の運命を受け入れて住民も共に滅びるのをよしとした。
ガミラスは生き残る道を必死で探した。
地球を無慈悲に滅ぼしてまでも、移住しそこに新たな安住の地を得ようとした。
中学生の頃、イスカンダル善、ガミラス悪というふうに思っていたような気がする。
大人になって考えてみると、イスカンダルの上に立つ人たちが、あまりにも後ろ向きで無責任な気もしてくる。
私がイスカンダル人だったら、なんとか生きる道を探すべきではと切望していると思う。
いや、上に立つ人云々よりもイスカンダル人ってみんな、そんな悟りを開いたような人たちだったのかもしれないけども…。
ガミラスの方がごくごく現実的だ。
私は到底イスカンダル人にはなれそうにもない。きっとガミラス人の方に考えは近いと思う。
スターシャとデスラー総統がホットラインで、互いの立場で応戦しあうのは本編の最重要シーンの一つである。
スターシャは総統に対して毅然とした態度でヤマトの妨害をするな!との抗議の電話をかけてきた。
PTAの口うるさいおばちゃんのような厳しい口調である。叱られてるよ、総統。
総統は、たまには優しい言葉の一つもかけて欲しいなどと言ってるところをみると、やはりこの頃から気はあったもようである。
あんなに美人なんだもん、男としては当然といえば当然かもしれない。
「新たなる旅立ち」で、デスラー総統がスターシャを「愛してる」発言をしたりするもんだから、もしや二人は昔何かあったとか…と思いながら今回よーく見直してみた。
言いたいことをズバズバ本音で言い合ってるところをみると別れた元夫婦みたいなかんじではないか?などを、じっくりと見定めてやろうという魂胆である。
うーん、見たところ、やはりそれはないね。
スターシャは、とにかく毅然としていて、全く歯牙にもかけてない様子だし、総統は気があるのかもしれないだろうけど、それより自分の星ガミラス帝国のことが一番大好きそうである。
とにかく二人とも星のトップとして強い信念を持っていて、それは絶対相容れない理念で、どちらも一歩も退く気はないという一本気、頑固さん二人というところか。
そう、この二人って、方向性は正反対だけど、何か本質似たところがあるのかも。
スターシャのそういうところが好きだったのかもね…総統。
でも、きっとスターシャの方が総統よりも頑固さは一枚上であろう。
総統はその後、シリーズが進むにつれて、性格変遷されていくことになるが、スターシャは最期まであくまでも頑固だったからな…。
ちなみに、スターシャの名前ってこの字面通りの発音でいいのか?それが正式だとかどこかで耳にしたのだが、総統がいつも言ってるのはどう聞いても「スターシア」だよね…。
スターシャ本人が「私はイスカンダルの…」のときもなんかも、スターシアと聞こえるような気がする。
本人が言ってるんだからやっぱりスターシアなのか?ちょっと混乱している私である。
21.「24話死闘!神よガミラスのために泣け!!」について
ヤマトとガミラスの最終決戦、ガミラス本星での本土決戦の回である。
この戦いの結果は当時、私をはじめ見ていた子供に相当な衝撃を与えたと思う。
絶句したと思う。
ガミラスが地球に対して行っていたことは、非人道的で許しがたいものであり、ヤマトは汚染された地球を救う為にコスモクリーナーDという唯一の望みの装置を得る為にイスカンダルに向かっていたのである。
途中敵と戦っていたのも向こうが攻撃してくるので、いわば正当防衛である、だからこちらには何の非もないというように私は受け止めていた。
ドメルが敗れて、自爆した時も、敵ながらあっぱれとは思いながら、ドメルも軍人だしね…仕方ないかな、というふうに受け止めていたからさほど心は痛まなかった。
しかし、この本土決戦の結果はどうであろう。
ガミラス星はヤマトが海底火山脈を波動砲で撃った結果、星として絶望的に壊滅してしまう。
おそらく、あの時点で戦闘を止めていても、あの星には人が住み続けるというのは無理の状態になっていたのではと思われる。
その後も、ガミラス側からの天井ミサイル攻撃とヤマトの応戦で完全に都市は廃墟と成り果てる。
地球も瀕死の状態らしいが、こちらは既に死滅した状態だ。
ここまでしちゃって、…これはもう正当防衛どころじゃない…これってまずいでしょう、やりすぎでしょう!当時も痛切に思った。
今回見直すと、この前の23話には、デスラー総統とスターシャとのホットラインでやりとりシーンがある。
ガミラスの地球侵略の目的が、滅びる自星の運命から逃れ、生き残るが為に、地球への移住に一丸となって望みをかけてやっていることだったと、視聴者ははっきりと知る。
ガミラスが星として、とてつもなくひどい状態にあり、移住はもう急を要する事態らしいことも。
一方、この回でヤマトの艦長沖田の口からは「ガミラスを葬らんかぎりイスカンダルへの道はない」という言葉も私たちは聞く。
24話内では、沖田はヤマトが絶対絶命状態の中、助言を乞う古代に向かい、ガミラス星の濃硫酸の海へ潜り、海底火山脈を撃ち火山活動を誘発させるように告げる。
沖田はそれによって星自体が壊滅することを十分理解したうえでの指示であろう。(沖田は優れた物理学者でもあるので)
つまり彼はガミラスを彼の言葉どおり葬り去る決断で、攻撃を示唆したのである。
それはガミラスの兵士だけでなく一般人も含めて壊滅するであろう決断を。
総統がこの攻撃を見て、一時ヒス曰く「おかしくなられた」といった狂乱状態に陥ったが、きっと「そこまでやるか?!」と思ったのだろう。
総統もこの後ヤマトに対する攻撃を止めないから、ヤマトも攻撃を続けて、結果、完全死滅状態にまでいってしまう。
視聴者も正義の為の戦いに勝利して良かった、良かった、なんていう気にはなるはずもない。
さっきまで被害者側だったはずなのに、今はもう加害者になってしまった気分であった。
ガミラス側はいつも総統の周りの軍人たちのみの描写で、一般人が全く出てこなく、不思議な感じがする星だったのだが、今思うとそれは意図的な描写だったのかもしれない。
一般人の姿を私たちが見てしまっていたら、この星を死滅状態に陥れてしまったという事実を精神的にきっと受け止めきれなかっただろうから。
あえて、悪の組織みたいなガミラス星の描写にしていたのかもしれないなぁと今思っている。
戦いは始めてしまえば、このくらいというところで止めることなどできはしない。
行き着くところまで行って、取り返しのつかない結果をその目で見ることになった後でやっと後悔するという、救いのない事実を思い知らされる。
きっと、何百年、何千年も人はそれを繰り返している。
いつも分かっていても又、繰り返し、過ちをおかしてしまう。
「ヤマト」はこの24話なくして「ヤマト」ではないといってもいいだろう。
古代が言う「負けたものは幸せになる権利はないのか。」「我々がしなければならなかったのは戦うことじゃない。愛し合うことだった。勝利か、クソでもくらえ!」手に持った銃を地面に叩きつける場面は痛切だ。
ガミラスは地球に対する非情な行いの報いで星として終わりを迎えるという無残な最期。
これぞ因果応報であるが、今回観て思ったのは沖田が帰路、地球を見ながら病状悪化で死んでゆくのも、それ以外の方法がなかったから致し方なかったのだが、星を壊滅させてしまった彼の重い決断に対する結果としての死だったかもしれないような気がした。
沖田が死なずに、皆元気で地球も青く戻って良かったねーでは、きっと私の心にこのようにずっと一作目が残ることはなかったろう。
ある意味容赦なきビターな展開の物語であったからこそ今も十分鑑賞に堪え、輝いているのであろう。
さて、ではデスラー総統ですが、一作目ではちゃんと報いを受けて最期は自分が打ったデスラー砲がはね返ってきて爆死というちょっと間抜けな死に方をしている。
これはこれで納まりがいいのだが、続編「さらば…」で復活して出てきた時は、死にきれず彗星帝国に拾われ、又懲りずに戦いを挑み死んでいくこととなっていた。
それがテレビ版続編2では死なないで、シリーズとなるその後の作品にもずっと出続ける展開になる。
デスラー総統、おそらくこの人の業が登場人物の中で一番深いはずである。
ヤマト2以降、「新たなる旅立ち」では、彼にとって大好きな母星ガミラスが目の前で大爆発しちゃうし、生き残りのガミラス艦隊も自艦以外壊滅するし、実はこっそり好きだったスターシャにも死なれるは、イスカンダル星もついでに自爆消滅という心連続フルボッコ状態である。
その後、がんばって再びガルマンガミラス帝国を建国したのに赤色銀河出現といった宇宙の大異変に巻き込まれ、ガルマンガミラスもほぼ壊滅。
総統は運良く視察に出ていて無事だったのだが、繰り返される災難続き。
これって総統は業が深すぎて死ぬことも出来ないのでは…、生きながらの煉獄状態にあるのではとも思える。
もっともっと栄光と苦難の連続繰り返しが今後も待ってるかもしれないよ…こわいなぁ。
しかし、そんなであっても、打たれ強いというか、全然懲りないというか、すごくタフなのでいつも前向きやる気満々である。
私などは、そういうところが見ていて勇気づけられる(笑)。
アニメの世界にあっても相当稀有な存在の方である。