62.「宇宙戦艦ヤマト2199・星巡る方舟」を観たこと
「宇宙戦艦ヤマト2199」本編については、このサイトのヤマトシリーズの感想ページで取り上げた。
昔大好きだったアニメが何十年かぶりに新作として蘇ったのである、どうして喜ばずにいられよう。
観られたこと自体は 大変嬉しかった。
が、その新作を最後まで観た直後は、自分が予想していたものと全然違ったものになっていたことに戸惑い、憤りさえ感じていた。
その後、再度観なおして、やっと平静に評価できるようになったものの、私の中には依然「旧作の方が好き!」という思いがあり、感想の内容はどちらかといえば否定的なものになってしまった。
そういうわけで、同じスタッフによるこの映画「星を巡る方舟」についても正直さほど期待していなかった。
でも、やはりヤマトの新作映画ですから、興味が無いわけではない。
期待していなくても、観たいことは観たい…(結局やっぱり観たいのか!笑)
ブログでも書いたが、私の事情で、観るのがものすごく遅くなったが(1年遅れである…)、この度やっと観ることができた。
さほど期待がない分、気負いもなくリラックス気分で観た。
観始めるとすぐに「えっ?、悪くないかも…」と思い、しばらくすると「面白いよね、これ…!」、そして中盤になる頃には夢中で観入っていた。
観終わった後もその気持ちに変わりなく、むしろ大満足だったといえよう。
とても面白かった!
今までの本編に対しての「どうなの?」という気持ちさえ覆えしてくれるくらい、この作品は私には興味深く面白かったのだ。
実は今、この作品を観終わって、本編「2199」に対して自分が大きな思い違いをしていたのでは…と思っている。
それは根本的な思い違いだったのではないか。
もしそうだとしたら、私の「2199」全体への見方は大きく変わるかもしれない…。(勿論良い方向にである)
そのことを含めて、項目別に感想を書く。
63.桐生美影のこと
この物語は彼女の視点で描かれている。
ヤマト側の主人公的な立ち位置の人物でもある。
冒頭部分で描かれていた火星における戦いで亡くなった空間騎兵隊の桐生隊長の一人娘のようだ。
若くてスレンダー(胸はペッタンコ系)で、そそっかしい所もあるが、とても利発で優秀な言語学者でもある。
「2199」本編では主要な女子キャラではなかった。
私など、この娘がいたことすら覚えていなかったぐらいだ。
しかし、彼女を主にもってきたのが良かったと思う。
「2199」に対してやや不満を持っていた私は、彼女目線ということで気持ちも新たに物語に入れた。
「2199」の続編の2シーズン目が作られるらしいことをネットで読んだ。
流れからいって、旧作の映画「さらば宇宙戦艦ヤマト」とテレビ放映された「宇宙戦艦ヤマト2」分のリメイクになると思われる。
そこには勿論、空間騎兵隊が登場するのだろう。
亡き隊長の娘さんの彼女は空間騎兵隊とヤマトを繋ぐ役割も果たす人物でもあるだろう。
その紹介も兼ねての抜擢かもしれない。
この作品内で彼女は父が戦死したことを最後まで知らぬままであった。
おそらく2シーズン目でそれを知ることになるのだろうと思うと、すっかり彼女贔屓になった私は胸が痛む(かわいそう…)。
反面、その2シーズン目が早く観たい!!という気も大いに沸き起こってくるのである。
これって、次作への伏線にもなる巧みな人物配置であったと思う。
この作品で私は、後半のガトランティスとの戦闘部分よりも、謎の星シャンブロウの大和ホテル内に皆が閉じ込められていた部分がとても面白かった。
このあたりの作品の雰囲気は「2199」本編でのエピソードに「時計仕掛けの虜囚」や「魔女はささやく」に似ている。
どことなく物悲しく、叙情的で、センチメンタルな趣もある…。
出渕監督の演出の本領はこういう方面で遺憾なく発揮されるのではと私は思うのだが…。
勿論、そんな雰囲気が好きというだけでなく桐生御影を通した謎解きも大変良かった。
彼女のキャラが濃すぎず、薄すぎずのごく普通っぽいところも好感が持てたし、一見普通の女子だけど優秀な言語学者であるという設定が利いた物語展開がいい。
洞察力に優れ、言語に造詣の深い彼女ゆえに、彼女らが囚われた星の秘密に気づくのだ。
いや、もしかしたら彼女は古代アケーリアス文明の意思に選ばれ、気づくように導かれていたのかもしれないが…。
そう、彼女は、途中で、巫女さんみたいになる(憑依?)のだった…。
古代アケーリアス文明を神秘的に見せる上では効果的で必要な演出だったといえばそうなのだが。
「2199」本編の岬百合亜ちゃんといい、製作サイドはこういうのが好みなのか?(笑)
まあ、私だって、こういう演出は嫌いではないけど…、本編でも、又この作品でも続けて若き女子が憑依…という展開を見せられると、又か…という気もしないことはない。
二度あることは三度あるなんていうが…、今後はもう無い方がいいと思う(笑)
64.バーガーのこと
ガミラス側の主要人物がバーガーであるというのをこの作品を観る前に耳にした私は、何故バーガーが?といぶかしく思っていた。
「2199」本編でドメル配下の同胞たちが戦死していく中、バーガーも最期の時に「こんな結末、認められるかよぉ!」と叫んで艦とともに沈んでいった。
私はここで戦死したと思っていたが、生き残っていたんだ。
「星巡る方舟」が最も描きたかったのは、地球人、ガミラス人、ジレル人が古代アケーリアス文明の播種船の遺跡において手を携えるシーンであったと思う。
主題はシーンが象徴するように異星人(異民族)との相互理解の可能性を描くことだろう。
それを描くとなると、ガミラス側の主となる人物は、ガミラス本星でヤマトを和平を結んだのを目の当たりにしたような人物ではふさわしくないだろう。
物語の始まりの時点では和平を受け入れていない立場の人物でなければならないのだ。
むしろ、恨んでるぐらいがよりよいと思う(苦笑)。
本編製作中にきっともうこの作品の構想はあったのだろう。
ドメル陣営の中では、バーガーが見た目や気質で選ばれたのだと思う。
バーガーの中ではヤマトとの戦いは終わっていないようである。
冒頭で旧知のネレディアの諌める言葉に耳を貸さず、復讐する云々を口にしていた。。
彼は仲間たちが死んでいったこと(今から思えば無駄死にだったかもしれない)、自分がおめおめと生き残っていること、それらを意地でも認めたくないのかもしれない。
実はバーガーは過去にもう一つ「こんなこと認められるかよぉ!」という出来事を抱えていた。
それは彼と同じく軍人でもあった恋人を戦いの中で助けられず死なせてしまったこと。
彼の中ではその事実も受け止められていないようだ。
むしろこの過去の出来事が彼の意固地の一番の原因となっていたのかもしれない。
そんな彼が薄鈍の星シャンブロウに閉じこめられて、奇しくも地球人と何日か過ごすことになる。(地球人とは認識せずにだが)
彼はこれといった動きが取れない中、失った恋人と見た目がそっくりの桐生御影に会ったことで、自分自身と改めて向き合うことになる。
外界の干渉の無いこの場で、バーガー自身の中のずっとくすぶっていたものが氷解していったようである。
そして、共に囚われていたのが実はヤマトの乗員だと知らされた時にも、共同生活の中での芽生えた信頼からか、彼の中にはもう地球人に対する復讐心は無くなっていたのだった。
ヤマトと共に共通の敵であるガトランティスのダガールとの戦闘を繰り広げるバーガー。
部下や大切な友人であるネレディアを救う為に死を覚悟した攻撃に出る彼が口にしたのは「こんな結末なら、認めてやってもいいぜ……!!」であった。
この後、バーガー、又死んだ?!と思わされたが、再び九死に一生を得て無事救出された。
うーん、なんという強運の人!(笑)
フォムト・バーガーは物語の最初と最後で、一番心情の変化のあった人物であった。
そして、カッコイイ見せ場も十分あった。
こう考えると、この作品の本当の主役はバーガーだったのかもしれない。
65.古代君のこと
私はこの作品を観て反省している。
「2199」の古代君が薄味だの存在感がないだのと以前書いた感想でこき下ろしたことをだ。
沖田が病の床にある今、艦の指揮を代わってとる古代の落ち着き、冷静さは、とても頼りになる。
そうか、この立場におくと、このキャラ設定がしっくりくるんだ。
「星巡る方舟」の古代君はとてもいい!見直しました。
むしろ、私の見る目がなかったのかもしれないけど…(苦笑)。
これと反対だったのが旧作の古代君だった。
沖田艦長亡き後、「ヤマト2」以降、艦長代理をやっていた時、なんだか納まりが悪い気がしていた。
作品を重ねるうちにだんだんましになっていったようにも思うが、妙な違和感はずっとあったように思う。
「2199」の古代君はあれを反面教師としたのだろうか…(苦笑)。
もしかして当初から、艦の指揮をとる姿を想定して、あんなに思慮深い優等生型の若者にキャラ設定していたのか!?(笑)
謎の星シャンブロウに囚われた時も、とても落ち着いていた(ほんとに若者なのか?と思うぐらい落ち着いていた・笑)。
バーガーがややラフな感じの性格設定だったので、対比になっていて面白かった。
バーガーたちと常に穏便に接していたのも、この古代君キャラならしごく納得できた。
こういう平静な古代君でなければ、バーガーたちとの相互理解の可能性も探れなかっただろう。
古代君の名誉の為に一言。
バーガーの項にバーガーが主役…と書いたが、対ガトランティス戦ではやはり古代君が主役だったと思います!(笑)
今回の古代君に対しては終始高評価の私なのだが、一つだけ気になることが…。
「方舟」の古代君についてヴィジュアル面のことだが、…ちょっと口が大きい?
キャラクターデザインの癖でしょうか?
本編の時の古代君はそのことは全然気にならなかったように思うのだが…(あの時は大きくなかったような…)、終盤には見慣れたが、初めのうち気になってしょうがない私だった。
(実は本編2199の時はデスラー総統の口が大きいと気になっていた…・笑)
66.ガトランティスのこと
おそらく対ガトランティス本星との戦いの話が次作だろう。(2シーズンの噂からして)
今回のガトランティスのダガームは露払い的なごく小物な人物だった。
ここでは次作への繋ぎ的な戦闘が繰り広げられた。
ダガームとその一行らの外見からは古代中国史の匈奴のイメージが浮かぶ。
ガミラスも「2199」で蛮族と呼んでいたし。
ホログラムで出てきたサーベラーは旧作「さらば宇宙戦艦ヤマト」の時のヴィジュアルを踏襲していた。
そうなるとズォーダー大帝も「さらば…」のような感じの見た目なのだろうか。(興味津々です)
ガトランティスがらみで、私が今回一番気になったのは、ダガームの艦に搭載されていた新兵器なるものについてだ。
火焔直撃砲と呼ばれていたが、これをガミラスの科学奴隷に作らせたとサーベラーが言っていたことだ。
ヤマトの面々やバーガーたちが気づいたようにドメルの艦の武器と一緒らしい。
話の流れからして、そんなものを技術提供できる科学奴隷って、やはりあの超優秀なテクノクラートのタラン兄だよね…。
タランがガトランティスにいるのだとしたら(死んんでなかったのか?)アベルト・デスラー総統もやはりいるのだろう。
旧作でもガトランティスにいたのはあの二人だったし。
敵対していたガトランティスにそんな技術提供してるのはどういう意図なのだろう?
命を助けてもらったお礼でとはいくらなんでも考えにくい。
旧作では滅んだガミラスの仇を討つためにガトランティスに追随していたが、今回はそれもないだろうし。
今後のデスラー総統の動向はどのようなものになるのだろうか?
旧作とは違いガミラスは滅亡していないから、「ヤマト2」のように生き残ってその後、ガミラス再建という道筋は絶対にないだろうし…。
考えると悪い方悪い方に思考は向かうばかりである。
アベルトのことについてはいろいろ文句があった私であるが、そうは言っても彼のことは大変心配もしているのだ!(笑)。
あんまりひどい扱いはしないでほしい!というのが本音だ。
どうか「2199」本編の汚名を挽回するような役回りにしてほしいものである!(無理か…?)
とにかく、「ちょっとはカッコいいところもありますように!」これだけは切実に願っている!!(涙)
そして、下世話な私としては、旧作「ヤマト2」で総統が蘇生手術されていた、あの誰得?状態の場面が再現されているのだろうか?!!というのが本当は何よりも一番気になっているのだった。
旧作の場面についての詳細を知りたい方は「ヤマト2」の感想ページをご参照ください(笑)。
あれ、新作でもあるのだろうか…?いやはや、ますますこのあたりは興味津々である。