26.「宇宙戦艦ヤマト完結編」を観て

 

「ヤマト完結編」はその名のとおり、ずっとヤマトシリーズを観てきた視聴者とヤマトとの別れの為の物語だ。

一作目から、「さらば」「2」「新たなる」「永遠に」「Ⅲ」と作られてきたヤマト、終わりそうで終わらないヤマト、ヤマトという艦がある限り、制作側は又次作を作りたくなるだろう。

続ける度にマンネリ化は避けられず、質の低下はファンを作品から離れさせるという悪循環が待っている。

 

だから、これが最後と名打った(今度は本気で…・苦笑)ヤマトはこの完結編で、アクエリアスの海中に沈み大破するという形以外では終われなくなっていたのかもしれない。

そして作品中ずっと引き延ばされていた古代と雪のラブロマンスに決着をつけることも、この作品が描かなければならないテーマの一つであったのだろう。

正しくこの作品はこの二つの目的の為にあつらえられた設定の物語であった。

 

なので途中の戦闘のあれこれや、敵方のこと、地球の状況がどうなったのかということ等も、見終わった後にはさほど心に残らず、とにかくヤマトが沈んで、古代と雪が結ばれたということだけが強烈に印象に残るのだった。

物語の流れとしては、別に文句をつけるようなところはさほど無い。

むしろ、戦闘シーンや構成もまとまっていて及第点だと思う。

しかし、それではとても面白かったのか?と問われると、まあまあだったと私は答えるだろう。

まあまあの理由など細かいことは項目別に分けて述べることにする。

 

そうは言ってもヤマトが沈むシーンを見ては又、泣かされた私なのであるが…。(すぐ泣く、よく泣く奴である!・苦笑)

じゃあ、結構感動したのかな…?う…ん、全体ではそうでもなかったのだが、感動した部分はうんと感動したのだった。(笑) 

 

 

(1)ナレーションのこと

 

ナレーションは名優仲代達矢さんである。

もしかしたら私はこのナレーションがこの作品で一番印象に残ったかもしれない(笑)。

大変重厚なのである。

仲代さんのナレーションが作中流れる度に「うわっ!深刻な出来事にみまわれている!!」という気持ちに襲われるというか…。

これはもう浮いているといってもいいほど重厚過ぎるのである。

作品が引き締まるを通り越して、私などは気持ちも暗く落ち込みそうになった。

悲壮過ぎるというか…。

やはり名優過ぎるのかもしれない仲代達矢さん、うーん、おそるべし!

 

  

(2)水惑星アクエリアスのこと

 

私は常々ヤマトシリーズの女神系の人々については「?」という気持ちで見ているのであるが、アクエリアスのクイーンアクエリアスについても又々大きな「?」の気持ちで見ていた。

彼女は女神のような、いや、星の化身のような方で、巨大ホログラムみたいに空中に上半身だけが浮かんでいるような描かれ方であった。

 

アクエリアスは、他の星に接近すると引力の影響で相手の星に水を多量に降らせて大洪水を起こしてしまうようだ。

結果、その星に都市などが存在する場合、予想外の降雨で全てのものが水没…、その星の文明を滅ぼしてしまうことも多々あるらしいのだ。(…、困ったものだ!)

このことについてクイーンアクエリアスは、それを「試練」という言葉で表現していて、試練に打ち勝て!という主旨ことをのたまわっていた。

 

この星のおかげで太古には地球に生命の基となる水が与えられたらしいので、そのことについては十分感謝すべきである。

創造と破壊をもたらし、人類に試練を課すということからして、アクエリアスって、宇宙の大いなる存在、創造主という意味の神にあたるのかもしれないという気もする。

しかし、アクエリアス!人が住み文明が発達した星の人々にとっては、あなたの存在って、たいそうやっかいな迷惑星だとみんな思っているよ。

出来ればもう来て欲しくないなぁ…と私などは思うのであった。(苦笑)

 

 

(3) ディンギル帝国のこと

 

今回の敵が大昔、地球に住んでいて、アクエリアスのせいで地球が水没した際に宇宙に行かなければならなくなった人々の末裔ディンギル人というのも皮肉な話である。

地球はヤマトのシリーズ作品中では、次から次へと他の星の移住先として標的にされ続けている。
彗星帝国は単なる侵略目的であったが、他の星にはそれぞれの切羽詰まった理由があった。
今回もその例にもれず、ディンギル人も考えれば気の毒なところも多々ある。
が、いかんせん、彼らは古代とルガール大総統が対峙した時の会話が物語るように、地球人と共存するなどということは全く考えにはない人たちなのだ。

 

ルガール大総統のキャラクターも、全然情愛のない人物という風な描かれ方一辺倒で、人物の陰影がないというか、あまり魅力的ではない。
しかし、自分の息子の少年を手に掛けた時に、少し狼狽した表情を見せたのは印象に残った。
もう少しルガール大総統の内面を描くようなエピソードなどあったらもっと深みがでたかなぁ…と残念な気もする。

 

ディンギル帝国がアクエリアスをワープさせることで本来6000年後に地球に接近予定だったのが短期間(何日単位)に地球に接近ということになるので、物語の展開はスピード感がでた。
なので見ていてそれなりにドキドキもする。
戦闘シーンも派手で決して悪くは無いのに、なんだか華がないような気もする。
これも、やはり敵方ディンギルの魅力が足りないせいだとも思う。

 

考えると、映画って2時間か長くても3時間までの時間しかないのだ。
そこでいろいろ悪役側を描き込むことって難しいのかもしれない。
デスラー総統だって、ズォーダー大帝だってテレビ枠であったから人物を描き込めたといっていいだろう。
すると、比較するのはかわいそうなのかも…。
まあ、どこをどうすれば良いのやら、具体的には私だってよく分からない…(分からないくせに言いたいことだけ言ってしまった…苦笑)。
とは言ってもやはり悪役側の造形って物語には重要なものだとつくづく思うのだった。

 

 

4)沖田艦長のこと

 

ヤマトを沈めるにあたってヤマトと共に人柱のように逝く人の人選を考えた時に、制作サイドが選んだのが一度死んだはずの沖田であったと思われる。
しかし沖田を選んだことは諸刃の剣であった。


確かにこのヤマトの航海、ヤマトの沈没と共に最期を迎える人物は沖田が一番ふさわしいというのは私も十分納得であるが、いかんせん、一作目の沖田の死の場面が感動的であればあっただけ、沖田が死んでいなかったと今更言われても、困るよ…、あの感動の涙を返せ!!という気持ちがずっと付きまとって引っかかり続ける。
と言っても、沖田と共に沈むのが一番納まりがいいとも思うし…、妙なジレンマに襲われるのだった。

 

沖田が生きて出てきて、古代が辞めたヤマトの艦長に就任したのを見た時に、私は複雑な気持ちになった。
だって、沖田の姿を見た時点でこの人はこのままこの作品の最後まで生き残って…ということは絶対ないであろうと予測できたからである。
沖田を今更又担ぎ出して、物語の流れ上必要なことであるのかもしれないが、ヤマトと共に死ねというのは非常に気の毒に思うのであった。


ヤマトに引導を渡す為に生き返らされて、そして共に又死ぬだけの使命を受けた沖田艦長…、製作サイドよ、少し扱いが酷いような気もするよ…。
一作目のあの偉大なる沖田艦長に対して、ちょっと無礼ではないか?!(沖田を尊敬する一人としてやや憤る私)
しかし、沖田本人は死に場所を得た的な感じで、まんざらでもないのかなぁ…?そんな感じに見えた…(苦笑)

 


(5)ヤマトが沈んだことについて

 

アクエリアスの水柱が地球を襲うのを阻止する為にヤマトは波動砲を水柱に向かって撃つ。
ヤマトにはトリチウムが積載されている為、撃つと同時に真っ二つに裂けてアクエリアスの水の中に水没してゆくヤマトの姿を私たちは見ることになった。
それは視聴者だけではなく、ヤマトの乗組員も全員、そして離れた場所にはデスラー艦が居て、デスラー総統もヤマトの最期を見守る。


このヤマトの沈没場面はたっぷりと時間をかけて描かれる。
一度水中に没したヤマトは船首を水中から乗り出すように再び浮かび上がらせ、最期の咆哮を発しながらもう一度ゆっくりと水中に沈んでゆく。

 

シリーズを通して観てきた視聴者にとっては、それまでの展開に多少の文句があろうがなかろうが、沈むヤマトの姿には熱い思いを感じずにはおられないはずである。
もう、それまでの展開なんか忘れてしまった…、印象薄くなって、この部分だけが記憶に残ってしまった。(いいのか、それで?…苦笑)

 

最後のナレーションで「さらば偉大な艦よ、宇宙戦艦ヤマト、さらば我らが青春の艦よ、今、安らかに眠れ」という下りがあるが、正しく私たちも、自らの青春の艦に今ここで別れを告げたのだという気持ちにさせられ、この場面を見るとやはり感無量であった。
勿論、私が泣かされたのはこの場面であった。
古代君も雪も、真田さんも、他のヤマトの乗員も、デスラー総統も泣いていた。

そしてヤマト好きのあなたも、きっと泣くと思いますよ。(なんかよく分からないままでも泣けると思う・苦笑)

 


(6)エピローグ、渚場面のこと

 

ヤマトの犠牲によって救われた地球ではヤマトの乗員たちが渚に集まり、明日への希望を胸に決意も新たに各自の生活に帰っていったようである。
彼らの姿がなくなった後に、古代と雪の結ばれるシーンがやってくる。


私の見たDVDでは花嫁姿の雪と古代が口づけを交わすのが本編部分に入っていて、特典映像にもっと長々とした、もろラブシーン版が収録されていた。
こんな色っぽい雪ちゃんの表情大写し長々演出でなくてもいいのでは…、という気もしなくはないが、大人のファンにサービスだろうか?
大人も変にいろいろ想像をかきたてられて観ていてこっぱずかしいんですが…(笑)。
本編中で沖田が二人にしつこく子供を作れ、子供を作れと言っていたので、そのことを受けてのシーンだろうか…、まあ、長々ラブシーン版でもいいのだが…(笑)。
しかし、これは小学生の子供と一緒に見るとかだったら非常に気まずいかもね…、だから本編は軽く口づけ版にしたのであろうと思った次第である(苦笑)。


古代と雪もめでたく結婚でラブロマンスの決着は大団円というところか。

古代はあまり深く考えていなかったんじゃないかと私はいぶかしんでいるのだが、雪はもっとずっと早くに、古代と結婚したいと強く望んでいたのではないか。
男って奴はどうにも優柔不断で困ったもんだ!(笑)
やっと結婚できて良かったね雪ちゃん!と女の私は心から祝福するのだった。

 

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